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レ・ミゼラブル
『レ・ミゼラブル』(Les Mis?rables)は、ヴィクトル・ユーゴーが1862年に書いた、ロマン主義フランス文学の大河小説である。
作品概要
1本のパンを盗んだために19年間もの監獄生活を送ることになったジャン・ヴァルジャンの生涯が描かれている。作品中ではナポレオン・ボナパルト|ナポレオン1世没落直後の1815年からルイ18世 (フランス王)|ルイ18世・シャルル10世 (フランス王)|シャルル10世のフランス復古王政|復古王政時代、フランス7月革命|七月革命後のルイ・フィリップ (フランス王)|ルイ・フィリップ王の7月王政|七月王政時代の最中の1833年までの18年間を描いており、さらに随所でフランス革命、ナポレオンのフランス第一帝政|第一帝政時代と百日天下、1848年革命#フランス2月革命|二月革命とその後勃発した六月暴動の回想・記憶が挿入される。当時のフランスを取り巻く社会情勢や民衆の生活も、物語の背景として詳しく記載されている。マリユスは若き日のユーゴー自身が、コゼットは彼の妻アデール・フーシェと愛人の:Fr:Juliette Drouet|ジュリエット・ドルーエがモデルだと言われている。アンジョルラスは革命の大天使と謳われたルイ・アントワーヌ・ド・サン=ジュストがモデル。原題 '''' は、直訳すると「悲惨な人々」「哀れな人々」であるが、日本においては黒岩涙香による翻案作品『噫無情』(ああむじょう)から『ああ無情』の題名が定着している。中国語圏では『悲惨世界』あるいは『孤星涙』と訳されている。
あらすじ
1815年10月のある日、75歳になったディーニュ=レ=バン|ディーニュのミリエル司教の司教館を、ひとりの男が訪れる。男の名はジャン・ヴァルジャン。貧困に耐え切れず、たった1本のパンを盗んだ罪でトゥーロンの刑務所|徒刑場で19年も服役していたのだ。行く先々で冷遇された彼を、司教は暖かく迎え入れる。しかし、その夜、大切にしていた銀の食器をヴァルジャンに盗まれてしまう。翌朝、彼を捕らえた憲兵に対して司教は「食器は私が与えたもの」だと告げて彼を放免させたうえに、二本の銀の燭台をも彼に差し出す。それまで人間不信と憎悪の塊であったヴァルジャンの魂は司教の信念に打ち砕かれる。迷いあぐねているうちに、サヴォイア|サヴォワの少年プティ・ジェルヴェ (Petit-Gervais) の持っていた銀貨40スー約2フラン、この時代は1フラン=20スー(鹿島茂著『「レ・ミゼラブル」』百六景より)を結果的に奪ってしまったことを司教に懺悔し、『正直な人間』として生きていくことを誓う。1819年、ヴァルジャンは:fr:Montreuil-sur-Mer|モントルイュ=スュール=メールで『マドレーヌ』と名乗り、黒いガラス玉および模造宝石の産業を興して成功をおさめていた。さらに、その善良な人柄と言動が人々に高く評価され、この街の市長になっていた。彼の営む工場では、1年ほど前からひとりの女性が働いていた。彼女の名前はファンティーヌ。パリから故郷のこの街に戻った彼女は、3歳になる手前の娘を:fr:Montfermeil|モンフェルメイユのテナルディエ夫妻に預け、女工として働いていたのだ。しかし、それから4年後の1823年1月、売春婦に身を落としたファンティーヌは、あるいざこざがきっかけでヴァルジャンに救われる。病に倒れた彼女の窮状を調べた彼は、彼女の娘コゼットを連れて帰ることを約束する。実は、テナルディエは"コゼットの養育費"と称し、様々な理由をつけてはファンティーヌから金を請求していたのだ。それが今では100フラン大変危険だが、現在の価格(日本円。食費基準で1フラン=2,000円)に換算すると、20万円。の借金となって、彼女の肩に重くのしかかっていた。だが、モンフェルメイユへ行こうとした矢先、ヴァルジャンは、自分と間違えられて逮捕された男シャンマティユーのことを私服警官ジャヴェールから聞かされる。葛藤の末、シャンマティユーを救うことを優先し、自身の正体を世間に公表する。結果、プティ・ジェルヴェから金40スーを盗んだ罪でジャヴェールに逮捕される。『終身徒刑(=終身刑)』の判決を受けて監獄へ向かう途中、軍艦オリオン号から落ちそうになった水兵を助け、海に転落。通算5度目となる脱獄を図る。そして、1823年のクリスマス・イヴの夜。今は亡きファンティーヌとの約束を果たすためモンフェルメイユにやって来たヴァルジャンは、村はずれの泉でコゼットに出会う。当時、コゼットは8歳であったにも関わらず、テナルディエ夫妻の営む宿屋で家庭内労働者|女中としてタダ働きさせられている上に夫妻から虐待され、娘たちからも軽蔑されていた。ヴァルジャンは静かな怒りをおぼえ、テナルディエの要求どおり1500フラン大変危険だが、脚注2.と同様に換算すると、300万円。を払い、クリスマスの日にコゼットを奪還する。道中、後を追ってきたテナルディエを牽制したヴァルジャンは、コゼットを連れてそのままパリへ逃亡する。パリに赴任していたジャヴェールら警察の追っ手をかいくぐり、フォーシュルヴァン爺さんの協力を得たふたりは、ル・プティ・ピクピュス修道院で暮らし始める。母のことをあまり覚えていないコゼットは、ヴァルジャンを父親|『父』として、また親友|『友達』として心の底から慕い、愛し続ける。ヴァルジャン自身もコゼットを娘|『娘』として、あらゆるたぐいの愛#キリスト教での愛|愛情を捧げる絶対的な存在として、彼女にまごころからの愛を注ぎ続ける。フォーシュルヴァン爺さんの没後、パリのプリュメ通りにある邸宅に落ち着いたヴァルジャンとコゼットは、よく:fr:Jardin_du_Luxembourg|リュクサンブール公園に散歩に来ていた。そんなふたりの姿をひとりの若者が見ていた。彼の名はマリユス・ポンメルシー。共和派の秘密結社『ABC(ア・ベ・セー)の友』に所属する弁護士である。ブルジョワ出身の彼は幼い頃に母を亡くし、母方の祖父に育てられたが、17歳のとき、ナポレオン1世のもとで働いていた父の死がきっかけでボナパルティズムに傾倒し、祖父と対立。家出していた。マリユスは美しく成長したコゼットに一目惚れし、『ユルシュール』と勝手に名づけ、何も考えられないほど彼女に恋焦がれてしまう。テナルディエの長女エポニーヌの助けを得て、マリユスは『ユルシュール』の住まいを見つけ、同じころ彼に惚れていた『ユルシュール』ことコゼットに、ようやく出逢うことができた。この出逢い以降、ふたりは互いを深く愛し合うようになる。だが、1832年6月3日、コゼットはヴァルジャンから、1週間後にイギリスへ渡ることを聞かされ、それをマリユスに話してしまう。ふたりの恋路は『突然の別れ』という最大の試練に塞がれてしまった――。コゼットと、彼女に絶対的な愛を捧げるジャン・ヴァルジャンとマリユス――この3人を中心とした運命の渦は、ジャヴェール、テナルディエ一家、マリユスの家族や親しい人々、犯罪者集団『パトロン=ミネット』、そして『ABCの友』のメンバーまで巻き込んで、『悲惨な人々』(レ・ミゼラブル)の織りなす物語をあちこちに残していく。大きくなった運命の渦は、七月革命の影響で混沌のなかにあるパリを駆けまわり、やがて1832年6月5日に勃発する『六月暴動』へと向かってゆくことになる……。これは、ひとりの徒刑囚が偉大なる聖人として生涯を終えるまでの物語であり、その底を流れているのは、永遠に変わることのない真実の愛|『愛』である。

